高級時計を購入するとき、できるだけ長く使いたいのはみなさん同じですよね。
“時計は一生モノ”とよく言いますが、それはきちんとオーバーホールを続けてこそ言えることなんです。漠然と“オーバーホールは大事”とわかっていても、“いったいオーバーホールってどんなことをやるのか” “やらないとどうなってしまうのか” と疑問に思っている方はお客様の中にも大勢いらっしゃると思います。本日はそのオーバーホールについて、ロレックスを例に解説していきたいと思います。
オーバーホールの流れ
まずオーバーホールの流れを説明すると、
・ケースからムーブメントを取り出し分解
↓
・ムーブメントを洗浄
↓
・部品を交換して防水の検査
↓
・外装の研磨
↓
・ケースへ組み込み
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・時間調節
といった感じです。主に分解と清掃なのですが、バネ棒を外し裏蓋を開け、全パーツをバラしてから洗浄。パーツの交換の必要があるものは新品にし、ムーブメントを抜いた状態で防水の検査を行い、その後数日間かけてタイムチェックを行うので、すべての行程でおおよそ3週間〜4週間かかります。「そんなにかかるの!?」と思うかもしれませんが、これは規定に基づいた厳しいチェックを行っているからなのです。逆に言えば熟練の職人が1つの時計に対してそれだけ時間をかけてひとつひとつのパーツをチェックしてくれているんです。
オーバーホールは何年に1度?
次に疑問なのが、「オーバーホールって何年に一度必要なの?」ということ。
結論から言うと4年に1度が実施するのがベストです。
ロレックスは多少メンテナスを怠っても、すぐに動かなくなるということはありません。頑丈さゆえにあまりメンテナンスをしなくても頑張って動いてしまうのがロレックス。しかしそのままでは一生持たすのは無理なんです。機械式時計の歯車は潤滑油でスムーズに動いているのですが、その油はだいた5年前後で干上がってしまいます。油が切れた歯車が擦れて消耗し、動作しにくくなってしまいます。そしてその負担が他の部分にも響いてしまい、結果的に大きな故障に繋がってしまうんですね。
オイスターケースの研磨にも制限あり!
以前のブログにも書いたように、牡蠣をイメージして作られたオイスターケースには優れた堅牢性と耐久性があり、肉厚にできています。オーバーホール時に研磨も依頼すれば新品のようにピカピカになって返ってきますが、さすがのオイスターケースも、無制限に磨けるわけではないのです。一般的に研磨できる回数の目安は5回。それ以上の研磨を行ってしまうと、オイスターケース本来の堅牢性や耐久性を損なうことになるんですね。
以上のようなメンテナンスを行い常にベストな状態を保つことで長持ちさせることができます。車を大事にする感覚に近いですね。オーバーホールの技術料はパーツ料を除いておおよそ5万円前後。購入時にはオーバーホールの経費なども含めた上で予算を決めていきたいですね。
鑑定士 錦戸でした。